症例ギャラリーGallery
牛浜ペットクリニックで、実際に施術した症例の一部をご紹介します。
※血液や手術等の写真が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
セントバーナードの去勢手術
セントバーナードの去勢手術
症例情報
セントバーナード(約63kg)、1歳齢、未去勢雄
主訴
去勢をしてほしい
- セントバーナード犬 ※Wikipediaより転載
- 切除した精巣(アロンアルファは比較)
獣医師のコメント
大型犬の手術には人手と時間が必要になります。たかが去勢といっても精巣の大きさは小型犬の5~10倍くらいあり、血管も太いため出血がしやすくなります。 当院では簡単な去勢や避妊手術でも人数を揃え、手術が迅速に進むように万全の準備をしています。
※ドクターコメントで使用している情報や画像等は全て飼い主様からのご了承を得て掲載しています。
膣ポリープ
膣ポリープ
症例情報
チワワ(約2.5kg)、6歳、未避妊雌
症状
2週間前から陰部が腫れている。尿が増え、臭いが強い。
- 外陰部からポリープが出ている
検査
血液検査にてCRPの上昇を認め、腹部超音波検査では軽度の子宮腫大を認めた。
陰部の腫脹は膣より発生しているポリープの可能性が考えられた。
診断
膣ポリープおよび子宮蓄膿症の疑い
治療
子宮卵巣摘出術と同時に、膣ポリープの切除を実施する。
- 尿道開口部を確認
- ポリープ切除後
- 摘出したポリープ
獣医師のコメント
膣ポリープは卵巣ホルモンの影響で発生・増殖すると言われており、未避妊の雌犬でよく認められます。大きくなったポリープが陰部から出ているけど無症状のこともあれば、尿道を圧迫して排尿障害を示すこともあります。いずれの場合も避妊手術と同時に外科的切除が適応となります。今回の症例は「線維平滑筋腫」という良性腫瘍に分類され、切除により良好な予後が期待されます。
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口唇部メラノーマ
口唇部メラノーマ
症例情報
ミニチュアダックス(約5kg)、11歳、避妊雌
症状
下くちびるにできものがある
検査
血液検査およびレントゲン検査において特記する異常は認められなかった
診断
口唇部腫瘤(鑑別:炎症、肉芽腫性疾患、腫瘍性疾患)
治療
腫瘤を外科的に切除する
- 口唇部に発生した腫瘤
- 切除後1週間
- 切除後2ヶ月
獣医師のコメント
皮膚などのしこり(腫瘤)がある場合、細い針を用いてしこりの細胞を採取しどのような鑑別が挙げられるか判断するのが一般的です。しかしながら今回の症例は唇の部分に腫瘤があり、針を刺すのも困難な状況だったため、診断目的で切除を実施しました。 結果は悪性黒色腫(メラノーマ)という悪性腫瘍(=癌)でした。最近の研究では口腔内にできるメラノーマは非常に悪性度が強いものが多いのですが、口唇部のメラノーマでは悪性でもきれいに腫瘍を切除できていれば比較的良好な経過をたどる可能性が高いとされています。 できるだけ腫瘍の細胞を残さないように切除したので今後の再発や転移に注意しながら経過観察をしていきます。
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会陰ヘルニア
会陰ヘルニア
症例情報
ミニチュアダックスフンド(約3.5kg)、14歳、未去勢雄
症状
肛門の左横が急に腫れてきた
検査
血液検査および画像診断において重大な異常は認められなかった
直腸検査で、直腸の走行が左側に変位しており、明らかな腫瘤は認められなかった
診断
会陰ヘルニア(左側)
治療
メッシュ法にてヘルニア整復術を実施する
- 肛門の左側を切開しているところ
- メッシュを通しているところ
獣医師のコメント
今回の症例は急に肛門が腫れてきたという主訴で来院されました。このように会陰ヘルニアは突然に起こることもあります。もちろん感染症や炎症、腫瘍性疾患などによる腫れも考えなければなりませんが、大体は直腸検査で分かることがほとんどです。
症状が軽度であっても、後々膀胱や前立腺までもヘルニア嚢内に入り込む危険性があるため、早めの手術をおすすめしています。発症には男性ホルモンが関与しているとも言われているため、若いうちの去勢手術で予防できる可能性のある病気です。
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会陰ヘルニア
会陰ヘルニア
症例情報
パピヨン(約4kg)、13歳、未去勢雄
症状
肛門の左横の皮膚が出ている
検査
血液検査およびレントゲン検査において重大な異常は認められなかった
腹部エコー検査にて膀胱と前立腺が若干尾側へ変位していたが、ヘルニア嚢の内部には入り込んでいなかった
直腸検査では、直腸の走行が左側に変位していた
診断
会陰ヘルニア(左側)
治療
メッシュ法にてヘルニア整復術を実施する
- 肛門横からメッシュを通して縫合します
- 実際に使用したメッシュ
- 手術直後
- 術後1ヶ月
獣医師のコメント
会陰ヘルニアは高齢の未去勢の雄に多く見られるのが特徴で、犬種としてミニチュアダックス、ウェルシュコーギー、パピヨン、ポメラニアンなどが発症しやすい傾向にあるようです。会陰ヘルニアには様々な手術方法がありますが、当院では「メッシュ」と呼ばれる網目状のシートを用いて手術しており、今のところこの方法で明らかな再発は見られず良好な治療成績を得ています。
術後直後は少し痛々しい感じもありますが、抜糸をして1ヶ月もすればほとんど気になることはありません。
発症には男性ホルモンが関与していると言われているため、若いうちの去勢手術もおすすめしています。
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皮膚腫瘤摘出
皮膚腫瘤摘出
症例情報
雑種犬(約20kg)、15歳、未去勢雄
症状
皮膚にしこりができて出血・膿んでいる
(1)腰背部腫瘤:約6cm大、表面部出血・排膿
(2)下顎部腫瘤:約3cm大、表面部こすれると出血
検査
血液検査で肝酵素値の上昇を認めた
レントゲンおよび腹部超音波検査においては大きな異常は認められなかった
診断
皮膚腫瘤の自壊
治療
皮膚腫瘤を外科的に切除する
- (1)腰背部腫瘤
- (2)下顎部腫瘤
- 腰背部腫瘤摘出(縫合中)
- 下顎部腫瘤摘出(切除中)
獣医師のコメント
今回の症例は15歳と高齢で、かつ肝臓の数値も高いながらでの全身麻酔を実施しました。本来であれば麻酔をかけたくない年齢なのですが、この症例はしこりが自壊(じかい:しこりが崩れて出血や感染を起こすこと)していて悪臭を放ち、飼い主さんもその介護で大変な苦労をされていました。こういった場合には外科的に切除をしてあげることも選択肢の一つとなります。今回は年齢と肝臓を考慮し、手術の3日前から点滴をすることで手術へ備えました。
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脾臓破裂(脾臓腫瘤出血)
脾臓破裂(脾臓腫瘤出血)
症例情報
ドーベルマン(約35kg)、10歳、避妊雌
※Wikipedia掲載画像より
症状
元気・食欲がない
検査
血液検査において明らかな異常は認められなかった
レントゲンにて腹腔内に巨大な占拠性病変を確認
腹部超音波検査にて腹腔内に出血所見が認められ、腫瘤は脾臓由来と判断した
- レントゲン上の占拠性病変
- エコー検査で腫瘤は脾臓由来、約10cmと確認
診断
脾臓腫瘤および腫瘤からの出血
治療
開腹による脾臓摘出を実施
- 手のひら大の腫瘤を脾臓ごと摘出
- 摘出した脾臓と腫瘤(写真の定規は15cm)
獣医師のコメント
脾臓の腫瘤は特に犬で多く認められる所見です。腫瘤は良性から悪性のものまで様々ですが、重要な点は、例え良性でも巨大化すると破裂して出血する危険性があるという点です。ちなみに今回の症例は「結節性過形成」という非腫瘍性病変でした。
この症例は脾臓の腫瘤から出血していたにもかかわらず、血液検査では異常値が認められませんでした。出血がある場合血液検査では貧血所見を伴うのが一般的ですが、出血してからそんなに時間が経過していないときは異常値が現れないこともあります。症状が「元気がない」という点も、少し様子を見てみよう、という判断につながりかねないため、次の日に急にぐったりして来院するケースもあります。
調子が悪いときはなるべく早めに診察を受けるのと、年1~2回の健康診断やエコー検査をすることで早期発見できる可能性もあるのでおすすめしています。
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帝王切開
帝王切開
症例情報
フレンチブルドッグ(約15kg)、4歳、雌
症状
陣痛が始まっているが、胎仔が出てこない
治療
帝王切開の実施
- 開腹して子宮を露出させます
- 子宮を切開して胎仔を押し出し取り出します
- 切開した部分を縫合します
- 取り出した胎仔です
獣医師のコメント
帝王切開の手術は、
- 陣痛が無い
- 陣痛から時間がたっているのに胎仔が出ない
- 母体の全身状態が悪化
の場合に適応となる緊急的な疾患です。時間がたてばたつほど胎仔と母体に大きな負担がかかってしまいます。そのため、妊娠が確認できたら定期的に動物病院でレントゲン検査や腹部エコー検査を実施して、胎仔の数や大きさなどを事前に把握しておくことが重要となります。
同時に子宮と卵巣を摘出することもできますが、今回のケースでは飼い主様が今後もワンちゃんに子犬を産ませたいとのことでしたので、子宮を縫ってお腹の中に戻しています。
※ドクターコメントで使用している情報や画像等は全て飼い主様からのご了承を得て掲載しています。
膀胱結石摘出手術
膀胱結石摘出手術
症例情報
ニューファンドランド(約65kg)、9歳、避妊雌
症状
頻尿
検査
レントゲンおよび腹部超音波検査にて膀胱内に結石を多数認める
尿検査において明らかな異常や結晶などは検出されなかった
- レントゲンで膀胱内に多数の結石が確認
- 一番大きい結石で約3cm
- 多数の大小不同の結石も認められる
- 膀胱壁も肥厚している
診断
膀胱結石およびそれに伴う膀胱炎による頻尿疑い
治療
開腹による膀胱結石摘出術を実施
- 一番大きい結石を取り出すところ
- 小さな結石はスプーンなどで採取
- 摘出された大小不同の膀胱結石
獣医師のコメント
この症例で重要な点は膀胱内に結石があるにもかかわらず、尿検査で結晶が検出されないというところです。尿検査は簡単でいろいろな情報を得ることができますが、結晶が出ていないからといって結石が否定されるわけではありません。頻尿が長期にわたって改善されない場合、尿検査が正常でも血液検査や画像診断等で膀胱結石や泌尿器の腫瘍性疾患を除外することが重要となります。
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