症例ギャラリーGallery
牛浜ペットクリニックで、実際に施術した症例の一部をご紹介します。
※血液や手術等の写真が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

会陰ヘルニア
会陰ヘルニア
症例情報
パピヨン(約4kg)、13歳、未去勢雄
症状
肛門の左横の皮膚が出ている
検査
血液検査およびレントゲン検査において重大な異常は認められなかった
腹部エコー検査にて膀胱と前立腺が若干尾側へ変位していたが、ヘルニア嚢の内部には入り込んでいなかった
直腸検査では、直腸の走行が左側に変位していた
診断
会陰ヘルニア(左側)
治療
メッシュ法にてヘルニア整復術を実施する
- 肛門横からメッシュを通して縫合します
- 実際に使用したメッシュ
- 手術直後
- 術後1ヶ月
獣医師のコメント
会陰ヘルニアは高齢の未去勢の雄に多く見られるのが特徴で、犬種としてミニチュアダックス、ウェルシュコーギー、パピヨン、ポメラニアンなどが発症しやすい傾向にあるようです。会陰ヘルニアには様々な手術方法がありますが、当院では「メッシュ」と呼ばれる網目状のシートを用いて手術しており、今のところこの方法で明らかな再発は見られず良好な治療成績を得ています。
術後直後は少し痛々しい感じもありますが、抜糸をして1ヶ月もすればほとんど気になることはありません。
発症には男性ホルモンが関与していると言われているため、若いうちの去勢手術もおすすめしています。
※ドクターコメントで使用している情報や画像等は全て飼い主様からのご了承を得て掲載しています。

皮膚移植術
皮膚移植術
症例情報
雑種猫(約4kg)、20歳、去勢雄
病歴
1年半前に他の猫とケンカした際にできた左肩の傷が、様々な洗浄や消毒を実施しても改善せず慢性的な潰瘍と壊死を繰り返していた。猫エイズウィルスに感染しており、病歴からおそらく免疫不全による皮膚の癒合不全が疑われ、通院をしていた。
症状
左肩の傷からウジがわいている
通院も長いため飼い主は手術の希望あり
検査
血液検査にて軽度の腎不全の兆候があったが、その他の検査で異常は認められなかった
診断
難治性潰瘍性皮膚炎
治療
皮膚移植術を実施して、潰瘍・壊死部分を治療する
- 手術前
- 手術後(解説付)
- 手術前
- 術後1ヵ月半
獣医師のコメント
今回の手術はかなりの挑戦でした。症例が腎不全持ちの20歳の高齢猫であるという時点で全身麻酔のリスクは非常に高くなります。そのため術前検査をしっかりやってリスクを把握し、手術の数日前から点滴を流し対処しました。おかげで術後に腎不全が悪化することも無く現在も元気に過ごしています。皮膚も以前に傷があったことなどを思わせないくらいにきれいになりました。
皮膚移植術は非常にまれな手術ではありますが、今回のように慢性で難治性の皮膚病の症例には効果が期待できることが分かりました。他にも火傷や外傷などで大きく皮膚を欠損した動物でも適応できる可能性があると考えられます。
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皮膚腫瘤摘出
皮膚腫瘤摘出
症例情報
雑種犬(約20kg)、15歳、未去勢雄
症状
皮膚にしこりができて出血・膿んでいる
(1)腰背部腫瘤:約6cm大、表面部出血・排膿
(2)下顎部腫瘤:約3cm大、表面部こすれると出血
検査
血液検査で肝酵素値の上昇を認めた
レントゲンおよび腹部超音波検査においては大きな異常は認められなかった
診断
皮膚腫瘤の自壊
治療
皮膚腫瘤を外科的に切除する
- (1)腰背部腫瘤
- (2)下顎部腫瘤
- 腰背部腫瘤摘出(縫合中)
- 下顎部腫瘤摘出(切除中)
獣医師のコメント
今回の症例は15歳と高齢で、かつ肝臓の数値も高いながらでの全身麻酔を実施しました。本来であれば麻酔をかけたくない年齢なのですが、この症例はしこりが自壊(じかい:しこりが崩れて出血や感染を起こすこと)していて悪臭を放ち、飼い主さんもその介護で大変な苦労をされていました。こういった場合には外科的に切除をしてあげることも選択肢の一つとなります。今回は年齢と肝臓を考慮し、手術の3日前から点滴をすることで手術へ備えました。
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ウサギの子宮腫瘤摘出
ウサギの子宮腫瘤摘出
症例情報
ホーランド・ロップイヤー(約2.5kg)、5歳、雌
症状
血尿、後ろ足をひきずる
検査
血液検査において特筆する異常は認められなかった
レントゲン検査および腹部超音波検査において腹腔内に巨大腫瘤を認めた
尿検査において潜血反応はわずかであった
- 腹腔内に巨大な占拠性病変を確認
- 超音波検査でも巨大な腫瘤を確認
診断
子宮内膜症および子宮由来腫瘍性疾患の疑い
陰部からの出血は子宮由来と考える
治療
開腹による脾臓摘出を実施
- 開腹して腫瘤を露出
- 腫瘤の一部が腸管と癒着している
- 子宮と血管を結紮
- 摘出した子宮および腫瘤
獣医師のコメント
高齢の避妊手術をしていない雌のウサギでは、子宮のがんの発生率が80%以上というデータがあります。ウサギなどの小動物は麻酔のリスクが犬猫と比較して高めではありますが、若い頃の避妊手術をしておくことで子宮の病気は予防できます。この症例は病理検査の結果「子宮腺癌」の診断が下されました。
今回の症例は血液検査で大きな異常がありませんでしたが、子宮のがんになると重度の貧血を引き起こし、最悪死に至る場合もあります。
後ろ足を引きずるという症状は子宮の病気では一般的ではありませんが、明らかな外傷や骨に異常が認められなかったため、子宮のがんが神経へ転移している可能性が考えられました。
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脾臓破裂(脾臓腫瘤出血)
脾臓破裂(脾臓腫瘤出血)
症例情報
ドーベルマン(約35kg)、10歳、避妊雌
※Wikipedia掲載画像より
症状
元気・食欲がない
検査
血液検査において明らかな異常は認められなかった
レントゲンにて腹腔内に巨大な占拠性病変を確認
腹部超音波検査にて腹腔内に出血所見が認められ、腫瘤は脾臓由来と判断した
- レントゲン上の占拠性病変
- エコー検査で腫瘤は脾臓由来、約10cmと確認
診断
脾臓腫瘤および腫瘤からの出血
治療
開腹による脾臓摘出を実施
- 手のひら大の腫瘤を脾臓ごと摘出
- 摘出した脾臓と腫瘤(写真の定規は15cm)
獣医師のコメント
脾臓の腫瘤は特に犬で多く認められる所見です。腫瘤は良性から悪性のものまで様々ですが、重要な点は、例え良性でも巨大化すると破裂して出血する危険性があるという点です。ちなみに今回の症例は「結節性過形成」という非腫瘍性病変でした。
この症例は脾臓の腫瘤から出血していたにもかかわらず、血液検査では異常値が認められませんでした。出血がある場合血液検査では貧血所見を伴うのが一般的ですが、出血してからそんなに時間が経過していないときは異常値が現れないこともあります。症状が「元気がない」という点も、少し様子を見てみよう、という判断につながりかねないため、次の日に急にぐったりして来院するケースもあります。
調子が悪いときはなるべく早めに診察を受けるのと、年1~2回の健康診断やエコー検査をすることで早期発見できる可能性もあるのでおすすめしています。
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帝王切開
帝王切開
症例情報
フレンチブルドッグ(約15kg)、4歳、雌
症状
陣痛が始まっているが、胎仔が出てこない
治療
帝王切開の実施
- 開腹して子宮を露出させます
- 子宮を切開して胎仔を押し出し取り出します
- 切開した部分を縫合します
- 取り出した胎仔です
獣医師のコメント
帝王切開の手術は、
- 陣痛が無い
- 陣痛から時間がたっているのに胎仔が出ない
- 母体の全身状態が悪化
の場合に適応となる緊急的な疾患です。時間がたてばたつほど胎仔と母体に大きな負担がかかってしまいます。そのため、妊娠が確認できたら定期的に動物病院でレントゲン検査や腹部エコー検査を実施して、胎仔の数や大きさなどを事前に把握しておくことが重要となります。
同時に子宮と卵巣を摘出することもできますが、今回のケースでは飼い主様が今後もワンちゃんに子犬を産ませたいとのことでしたので、子宮を縫ってお腹の中に戻しています。
※ドクターコメントで使用している情報や画像等は全て飼い主様からのご了承を得て掲載しています。

膀胱結石摘出手術
膀胱結石摘出手術
症例情報
ニューファンドランド(約65kg)、9歳、避妊雌
症状
頻尿
検査
レントゲンおよび腹部超音波検査にて膀胱内に結石を多数認める
尿検査において明らかな異常や結晶などは検出されなかった
- レントゲンで膀胱内に多数の結石が確認
- 一番大きい結石で約3cm
- 多数の大小不同の結石も認められる
- 膀胱壁も肥厚している
診断
膀胱結石およびそれに伴う膀胱炎による頻尿疑い
治療
開腹による膀胱結石摘出術を実施
- 一番大きい結石を取り出すところ
- 小さな結石はスプーンなどで採取
- 摘出された大小不同の膀胱結石
獣医師のコメント
この症例で重要な点は膀胱内に結石があるにもかかわらず、尿検査で結晶が検出されないというところです。尿検査は簡単でいろいろな情報を得ることができますが、結晶が出ていないからといって結石が否定されるわけではありません。頻尿が長期にわたって改善されない場合、尿検査が正常でも血液検査や画像診断等で膀胱結石や泌尿器の腫瘍性疾患を除外することが重要となります。
※ドクターコメントで使用している情報や画像等は全て飼い主様からのご了承を得て掲載しています。