症例ギャラリーGallery
牛浜ペットクリニックで、実際に施術した症例の一部をご紹介します。
※血液や手術等の写真が苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
眼瞼フラップ(角膜潰瘍治療)
眼瞼フラップ(角膜潰瘍治療)
症例情報
雑種猫(約4kg)、10ヶ月、去勢雄
症状
角膜潰瘍の治療をしているが、なかなか治らない
眼を強く閉じてしまっているため瞼(まぶた)が内反して毛が角膜に当たっている
- 左眼は角膜潰瘍の痛みのため閉じている
- 痛みが強く第3眼瞼が出ている
診断
眼瞼の内反による難治性の角膜潰瘍
治療
眼瞼フラップを実施する
- 処置後(上下の瞼を縫い合わせて瞼を閉じさせる)
獣医師のコメント
この症例は3ヶ月前から角膜潰瘍の治療を行っていましたが、瞼(まぶた)が内反(眼の内側に入ってしまう)するために改善傾向が認められませんでした。
今回はまぶたを縫い合わせる「眼瞼フラップ術」を実施することで、角膜の治癒促進を期待しています。
※ドクターコメントで使用している情報や画像等は全て飼い主様からのご了承を得て掲載しています。
猫の子宮蓄膿症/子宮水症
猫の子宮蓄膿症/子宮水症
症例情報
ヒマラヤン(約2.5kg)、8歳、未避妊雌
症状
お尻の周りを気にする、元気食欲はある
検査
血液検査にて異常所見は認められなかった。
レントゲンで子宮様陰影が認められ、
腹部超音波検査において子宮の腫大と子宮内の腫瘤状病変を多数認めた。
- 子宮様陰影の確認
- 子宮内液体貯留および腫瘤状病変を認める
診断
子宮蓄膿症(または子宮水症)および子宮内腫瘍の疑い。
治療
子宮卵巣摘出術(避妊手術)を実施し、摘出臓器を病理検査に提出する。
- 腫大した子宮を確認
- 左右の子宮を露出したところ
獣医師のコメント
子宮蓄膿症/子宮水症は一般的に犬でよく見られる疾患で、猫では非常にまれな病気です。猫では明らかな臨床症状を示さない場合が多く、血液検査でもはっきりしないことがあります。
今回の症例は摘出した子宮を調べたら膿がたまっていたので、子宮蓄膿症と診断しました。また子宮内の腫瘤は病理検査の結果「子宮内膜過形成」という非腫瘍性のものだったので、今回子宮と卵巣を摘出しているので予後は良好であると考えられます。
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肛門腫瘤摘出
肛門腫瘤摘出
症例情報
雑種犬(約20kg)、11歳、避妊雌
症状
2年前から肛門の2時の方向にしこりがあり、徐々に大きくなっている
検査
血液検査および画像診断において大きな異常や明らかな転移像は認められなかった
細胞診の結果、肛門周囲腫瘍の疑いがあるが良性か悪性の判別は困難であった
診断
肛門周囲腫瘍の疑い
治療
肛門腫瘤を外科的に切除する
- 肛門2時方向の腫瘤
- 腫瘤摘出・皮膚縫合後
- 術後1ヶ月
獣医師のコメント
何か腫瘤(しゅりゅう/しこり)がある場合、見た目だけの判断で腫瘍なのかどうかを判別することは困難です。そこで簡単にできる検査として「細胞診(FNA)」というものがあります。腫瘤に細い針を刺して中の細胞を採取し、それを顕微鏡で確認して腫瘍性疾患が疑われるのか、それとも感染症や炎症の疑いがあるのかを判断できます。しかしながらFNAで腫瘍性疾患が疑われても、良性か悪性なのかを区別するのは非常に難しいです。そのため「しこり」が腫瘍性疾患の疑いがあるなら、全身を検査して転移の兆候が無いかどうかを評価して、問題なければ外科的に切除し病理検査で確定診断を得ることができます。
統計的に肛門周りの腫瘍は悪性の場合が多いですが、この症例は病理検査の結果「肛門周囲腺腫」という良性腫瘍に分類される腫瘍で、外科的に完全に切除できたため予後は良好なものと考えられました。
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結膜癒着切除
結膜癒着切除
症例情報
雑種猫(約4kg)、2歳、未避妊雌
症状
左眼が開かない、今回避妊手術をしたいので眼の処置をしてもらいたい
- 症例外貌
- 左眼拡大:結膜が癒着している
検査
血液検査において特記する異常は認められなかった
結膜は癒着しているが、眼球との癒合はしていなかった
診断
左眼結膜癒着
治療
避妊手術のときに左眼の結膜の一部を外科的に切除する
- 処置前
- 処置後
獣医師のコメント
今回の症例は生後すでに左眼の結膜が癒着していました。猫の結膜癒着の原因には先天性、外傷などがありますが、多くはヘルペスウィルスの感染によります。眼球との癒着がなければ比較的きれいに切除することが可能になり、術後もほとんど違和感がありません。
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猫の子宮蓄膿症/子宮水症
猫の子宮蓄膿症/子宮水症
症例情報
雑種猫(約3.5kg)、15歳、未避妊雌
症状
お腹が急に膨らんできた
検査
腹部膨満以外での外見上の異常は認められず。
血液検査では大きな異常は認められなかった。
レントゲンで腹腔内に多数の腫瘤状陰影が認められ、
腹部超音波検査において子宮が腫大していることが確認された。
診断
子宮蓄膿症/子宮水症疑い
治療
子宮卵巣摘出術(避妊手術)を実施する
- 腫瘤状陰影の確認
- 腫瘤の正体は子宮であると判断
- 腫大した子宮を確認
- 子宮と卵巣を結紮して摘出
獣医師のコメント
子宮蓄膿症/子宮水症は一般的に犬でよく見られる疾患で、猫では非常にまれな病気です。犬では陰部からの排膿や出血が見られることが多いのですが、猫では明らかな排膿もなく、症状もはっきりしないケースの場合がほとんどです。
腹部膨満の症状は内分泌疾患、感染症、腫瘍性疾患など多くの病気に当てはまるので、血液検査や画像検査を実施して原因の特定をすることが診断をする上で重要となります。
手術は子宮と卵巣の摘出を実施するので、若い頃に避妊手術をすることで100%予防できる病気です。
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皮膚移植術
皮膚移植術
症例情報
雑種猫(約4kg)、20歳、去勢雄
病歴
1年半前に他の猫とケンカした際にできた左肩の傷が、様々な洗浄や消毒を実施しても改善せず慢性的な潰瘍と壊死を繰り返していた。猫エイズウィルスに感染しており、病歴からおそらく免疫不全による皮膚の癒合不全が疑われ、通院をしていた。
症状
左肩の傷からウジがわいている
通院も長いため飼い主は手術の希望あり
検査
血液検査にて軽度の腎不全の兆候があったが、その他の検査で異常は認められなかった
診断
難治性潰瘍性皮膚炎
治療
皮膚移植術を実施して、潰瘍・壊死部分を治療する
- 手術前
- 手術後(解説付)
- 手術前
- 術後1ヵ月半
獣医師のコメント
今回の手術はかなりの挑戦でした。症例が腎不全持ちの20歳の高齢猫であるという時点で全身麻酔のリスクは非常に高くなります。そのため術前検査をしっかりやってリスクを把握し、手術の数日前から点滴を流し対処しました。おかげで術後に腎不全が悪化することも無く現在も元気に過ごしています。皮膚も以前に傷があったことなどを思わせないくらいにきれいになりました。
皮膚移植術は非常にまれな手術ではありますが、今回のように慢性で難治性の皮膚病の症例には効果が期待できることが分かりました。他にも火傷や外傷などで大きく皮膚を欠損した動物でも適応できる可能性があると考えられます。
※ドクターコメントで使用している情報や画像等は全て飼い主様からのご了承を得て掲載しています。